「咲妃、我が見ておると、そなたもまだまだ時雨に負けておるな。」

 咲妃は振り向き、晴明に手を振る。

 「もう、晴明さん!口出しはやめてください!」

 晴明は、軽く眉を上げていたが、その目は優しく笑っていた。

 そこへ時雨が駆け寄り、晴明に抱きつく。

 「父上!昨日の鬼ごっこ、もう一度やろうよ!」

晴明は、時雨を抱き上げ、軽くくすぐる。

 「ほう、そなたも鬼ごっこに燃えておるか。ならば我も本気で相手してやろう。」

 時雨は笑顔で「やったー!」と叫ぶ。
 咲妃は二人を見つめ、胸がじんわり温かくなるのを感じた。


二人の間で小さな攻防が始まる。

時雨はあちらこちらで笑い声を響かせた。

 庭には桜の花びらが舞い、式神たちも嬉しそうに三人の周りを飛び回る。

 朱雀が時雨の頭の上をくるくると回り、からかうかのように光をちらつかせた。