「……あの日…私…。」

 咲妃が小さく呟く。
 晴明は横顔のまま、静かに頷いた。

 「覚えている。あの夜、そなたは我を庇い、光となって消えた。」

 「……ごめんなさい。怖かったけど、晴明さんを助けたかったの。」

 「謝るな。あれで我は生き延び、今こうして再び会えた。……それだけで、十分だ。」


風がふたりの髪を揺らす。
 咲妃はそっと、晴明の肩にもたれかかった。

 「ねえ、晴明さん。」

 「なんだ?」

 「もし、また私が未来に戻ってしまったら……どうしますか?」

 少しの沈黙のあと、晴明は静かに答えた。

 「そのときはまた、千年待つ。」