「夢じゃないですよ、晴明さん。……大好きな晴明さんに、会いに来ちゃいました。」



 その言葉を聞いた瞬間、晴明の目が大きく開かれた。

 しばらく何も言えず、ただ咲妃を見つめる。

 まるで、時が止まったかのようだった。


 「……あれ? 晴明さん、もしかして……私の名前、忘れちゃいました?」


 咲妃が冗談めかして笑うと、晴明の頬を一筋の涙が伝った。


 「……咲……妃……?!」


その名を呼んだ瞬間、晴明は咲妃を抱きしめていた。


 力強く、まるで二度と離れまいとするように。


 「咲妃っ……もう一生離すものか!」


 「苦しいですよ、晴明さん……」

 咲妃が笑うと、晴明もようやく笑顔を取り戻した。


 「私、もう帰りません。……ずっとここにいます。」


 「晴明さん、大好きですっ!」

 そのまま咲妃は、晴明にそっと唇を重ねた。


 風が優しく吹き抜け、朱雀が空高く舞い上がる。