「……晴明さん……」



 声が震えた。

 咲妃はそっと近づき、膝をついて彼の顔を覗き込む。

 静かな寝息。少し疲れたような表情。

 それでも、その顔がたまらなく愛おしかった。

 咲妃は微笑んで、晴明の頬にそっと手を添えた。



 「晴明さん、こんなところで寝ていたら風邪を引きますよ?」




その優しい声に、晴明のまつ毛がかすかに動いた。


 やがて、ゆっくりと瞼が開く。



 「……咲妃……そなたは……夢の中でも……会いに来てくれるのだな……」



 寝ぼけた声が、風に混じって届く。

 その言葉に、咲妃は涙がこみ上げた。

 ――まだ、想ってくれていた。