「……朱雀!」

 咲妃が思わず声を上げると、朱雀は羽を広げて嬉しそうに彼女の周りを飛び回った。

 紅の光が咲妃を包み、まるで再会を喜ぶように輝いている。


 「朱雀、晴明さんはどこ?」


 咲妃が尋ねると、朱雀は羽をふるわせて小さく鳴き、
 “ついておいで”と言わんばかりに庭の奥へと飛んでいった。

 咲妃は胸を押さえながら朱雀のあとを追った。

 そして辿り着いたのは――かつて、晴明と博雅がよく茶を楽しんでいた場所だった。

その柱の影に、白い狩衣を纏った一人の男が寄りかかっていた。

 風に髪が揺れ、長い睫毛が陽に照らされて光る。
 その姿は、あの頃と何も変わらない。

 ただ、少しだけやつれたように見えるその顔が、咲妃の胸を締めつけた。