立ち上がった咲妃は、ふわりと風に髪をなびかせた。

 腰まで伸びた茶色の髪が、陽の光に透けて金色に輝く。

 服装は、淡い水色のワンピース。

 繊細な小花柄が咲妃の清楚な雰囲気をより引き立てていた。

 高校生の頃よりもずっと大人びた顔立ち。

 透明感を湛えた瞳に、どこか憂いの影が宿る。


 ――それでも、笑うと太陽のように眩しい。


 けれど、その笑顔の奥には少しだけ不安があった。


「……でも、晴明さん……私のこと、覚えてるかな。」

 つぶやいた声は、風にかき消された。

 前回、命を懸けて晴明を守り、光となって消えた自分。

 あの後、晴明がどんな顔で自分を見送ったのか。

 それを思うだけで胸が締めつけられる。


 「……もう、お相手がいたらどうしよう……」

 「邪魔……だよね、きっと……」

そう呟いて、唇を噛む。