古い木の棚には、誰も手を触れたことのないような分厚い書籍が並んでいる。

 手袋をはめて、一冊ずつ埃を払う。

 ふと、古文書の背に書かれた文字が目に留まった。

 「――平安時代、安倍晴明伝記。」


 指先がぴくりと止まった。

 心臓が小さく跳ねる。

 「……晴明さんの……?」

 脚立に登り、そっとその分厚い本を引き抜こうとしたその瞬間――。