展示室を出ると、夕暮れの光が差し込んでいた。

 鳥居の向こうの空には、淡い金色の光が漂っている。

 風が吹き抜け、咲妃の髪が揺れた。

 その風の中に——確かに聞こえた。

 優しく、懐かしい声。



 『——咲妃。』


咲妃は涙をこぼしながら、空を見上げた。

 夕陽の光が、一瞬だけ人の形を描いたように見えた。

 金色の髪、静かな微笑み。

 「……晴明さん……」

 風が頬を撫でる。

 まるで彼が、そっと触れたかのように。


咲妃は微笑んで囁いた。

 「私も……たとえ千年先でも、晴明さんを想っています。」

 風が優しく鳴り、木々の葉が揺れた。

 それは、確かに彼の返事のようだった。