"咲妃殿"

もし再び巡り逢うこと叶わぬとも、
そなたの名を、我は千年ののちまでも忘れぬ。

その笑顔が未来で咲き続けることを、ただ祈る。

― 安倍晴明 ―


涙が止まらなかった。

 その文字を見つめるだけで、あの日の声が聞こえてくる気がした。


 ー咲妃……ー


 「晴明さん……」

 咲妃は、ガラス越しにそっと指先を重ねた。


そこへ職員の女性が優しく声をかけてきた。

 「安倍晴明に恋人がいたのではないかって、今ちょっと話題になってるんですよ。」

 「こんな手紙が残ってるなんて……ロマンチックですよね。」

 咲妃は涙を拭き、微笑んだ。

 「……はい。そうですね。」

 そして小さく呟く。

 「やっぱり、夢じゃなかったんだね……」