資料館の一室に入ると、そこは時間が止まったような静寂に包まれていた。


 硝子の展示台には、晴明の使っていた筆、呪符、衣の断片——そして一通の古びた手紙があった。


 その筆跡を見た瞬間、咲妃の心臓が跳ねた。


 ——見覚えのある、優しい字。


 手紙の見出しにはこう書かれていた。


"咲妃殿、"

 息が止まる。
 手が震える。

 咲妃は展示の前に立ち尽くし、涙が零れた。

 そこには、確かに——晴明の言葉が残されていた。