それから一年の月日が流れた。



 咲妃は高校三年生になり、修学旅行で京都へとやって来ていた。


 けれど、心のどこかはいつも“あの時代”に取り残されたままだった。

 「……晴明さん……」

 バスの車窓から流れる京都の街並みを眺めながら、咲妃はそっと呟いた。


 誰にも言えない——けれど消えない恋。


 新しい恋なんて、できるはずもなかった。