博雅は拳を握りしめた。
戦いの最中、彼女が晴明を庇って消えた光景が、まざまざと脳裏に蘇る。
「そうであったか……」
その声は震えていた。
二人はやがて、屋敷の庭に辿り着いた。
朝日が昇り、金色の光が庭を照らす。
その光の中で、式神たちが羽ばたいている。
白狐の姿、鳥の式神、そして蝶のように舞う光の精。
それらが、どこか咲妃の面影を映していた。
博雅は小さく息をつき、空を仰いだ。
「晴明……咲妃殿は、未来へ帰ったのだろうか?」
晴明は札を握りしめたまま、しばし黙した。
そして、柔らかく微笑んだ。
「——きっと、無事に帰っているはずだ。」
その声は穏やかで、けれど胸の奥に悲しみを隠していた。



