晴明は少しの間、黙っていた。


 そして、ゆっくりと開いた手の中には、一枚の古びた札があった。


 焼け跡に残る墨の痕、そこから微かに咲妃の香が漂っているように感じた。



 「——咲妃が、持っていた。」

 「咲妃が?」

 「そうだ。もとは我のものであったはずだ。だが、なぜ咲妃がこれを手にしていたのか……」


晴明は少し空を見上げ、微笑のような表情を浮かべた。

 「……おそらく、この札が時を越えたのだろう。」


 博雅は目を見張る。

 「時を……越えた?」

 晴明は静かに頷いた。

 「咲妃は、我を助けるためにこの世に現れたのだ。未来より呼ばれ、時の狭間を渡って。」

 「……咲妃殿が……」