晴明は、少し遅れて頷いた。
 「……ああ、なんとか、な。」

 二人は、夜が明けていく東の空を見上げた。
 そこには、もう黒い雲ひとつなかった。

屋敷に戻る途中、博雅はちらりと隣の友を見やった。

 晴明は何も言葉を発さず、ただ静かに歩いている。

 その背中には、いつもの気品と力強さがあったが——今日は少し、寂しそうだった。

 「……晴明。」

 呼びかけても、返事はない。

 ただ、晴明の手が何かを強く握っているのが見えた。

 博雅は歩みを止め、問いかけた。


 「その札は……?」