「ちがうの……もう、時間なの……」

 咲妃は震える手で、胸元から一枚の古びた札を取り出した。
 それは時の術を封じた、"転輪の符"ー禁忌の札だった——。

 「これ……晴明さんの……でしょ?」

 晴明は息を呑む。
 「まさか、これを……なぜ、——」

 「思い出したの……あの日……私、この札に呼ばれて、この時代に来たの。きっと……晴明さんに会うためだったんだよ。」



涙がぽろぽろと咲妃の頬を流れた。

 「でも……きっとこれで……私は未来に帰る……。」

 「……やめろ……そんなことを言うな。」

 「本当はずっと……晴明さんのそばに……いたかった……。」

 咲妃が言い終わる前に、晴明は咲妃を強く抱き締め、震える唇で咲妃の唇を塞いだ。



 その一瞬、時が止まったかのようだった。