ドン、と鈍い衝撃音。


 風を切る刃が咲妃の背を裂き、真っ白な着物がみるみる朱に染まっていく。


 「——っ、咲妃!!!」


 晴明が叫ぶ。目を見開き、駆け寄る。

 咲妃は膝をつき、その場に崩れ落ちた。

 「な、なぜ……我を庇ったのだ……咲妃っ!!」

 咲妃は苦しげに微笑んだ。

 「晴明さんが……、傷つくの、嫌だったから……」

 声はか細く、震えていた。


晴明はその身体を抱き締め、必死に術を唱える。

 「止血の陣、癒の印……! ……だめだ、効かぬ……!」

 咲妃の身体は淡く光りはじめていた。
 まるで、空へ還ろうとするように。

 「……晴明さん……」

 「しゃべるな! 今、助ける! 我が命を分けても構わぬ……だから——」