振り返ると、博雅が笛を手に駆けつけていた。
その後ろには、ぞろぞろと晴明の手下の陰陽師たちも続く。
咲妃は安堵で小さく息をつく。

 「博雅さんも…来てくれたんですね…!」

 「咲妃殿。無事でよかった。」

 博雅の笑顔に、咲妃は胸がきゅんとする。

 庭では道満と鬼式神たちが暴れ、戦場のような様相を呈していた。


晴明は咲妃の手を握り、真剣な眼差しで告げる。



「咲妃、離れて茂みに隠れていろ。」

 「でも…」名残惜しそうに咲妃は答えた。

 晴明は優しく、しかし決意を込めて言った。

 「案ずるな。我が必ず咲妃を守る。」

 その言葉と表情に、咲妃の頬は自然と赤くなる。ドキドキが止まらない。

 「…わかった。」



咲妃はそっと茂みに隠れ、晴明と博雅、そして式神たちの戦いを見守る。


 雷鳴が轟く中、光と闇の入り混じった庭で、安倍晴明と道満の壮絶な戦いが幕を開ける。


咲妃は、胸の奥で晴明を信じ、ただ祈るしかなかった。