「咲妃!」
全身に怒りがみなぎる。拳を強く握りしめ、険しい目で周囲を見渡す。
「晴明さっ…!」
晴明は即座に印を組み、道満に対抗する。だが、道満は素早く動き、晴明の印は崩れる。
「道満っ……!貴様っ!!」
「この娘は我がものだ。助けたければ、鬼屋敷に来るがよい。」
道満は不敵に笑い、咲妃を攫って闇の中に消えた。
「晴っ…明…!さ…ん!」
咲妃は必死に呼び続けるが、遠ざかる道満の背中しか見えない。
「咲妃ーーーーーっ!!」
その瞬間、晴明は怒りと焦りで全身が震えた。拳を握りしめ、息を荒げる。
瞳には、守るべき人を失うかもしれない焦りと激情が渦巻いていた。
「咲妃!必ず我が助けにいく!!」
夜空の下、平安の都は二人の運命の嵐の前触れに包まれていた。



