咲妃は驚き、顔を真っ赤にして必死に抗おうとするが、晴明の力強い手に両腕を押さえられ、びくともしない。

 「必死で逃げたと言う事だが、男の力では女であるそなたは敵わぬ。咲妃、もう少し危機感を持て。」


 その険しい表情に、咲妃はハッとした。

怒っているのではなく、彼の優しさがそこにあったのだ。

 「はい…」


素直に答える咲妃に、晴明は意地悪そうな笑みを浮かべた。

 「我からすれば、この景色、ずっと眺めていたいものだがな?」

 挑発的にからかわれ、咲妃は顔を真っ赤にする。

 「せ、晴明さんのスケベっ!変態!」


怒ったふりをして、咲妃は慌てて寝室へと逃げていく。

背後から聞こえる晴明の笑い声に、咲妃の心はまだ高鳴ったままだった。


 「ははは、可愛いものよのう…」


 縁側には、淡く夜の光が二人を包み込み、甘く切ない空気だけが残された。