鏡の前に立った咲妃は、普段のセーラー服とは全く違う化粧もした自分の姿に思わず息をのむ。


 「わぁ……可愛い……!」


 その瞬間、晴明の視線が咲妃に向いた。

 咲妃は心臓がドキドキして、思わず目を逸らす。

 「変ですか……?」

 晴明はそっぽを向いて、照れ隠しのように呟いた。


 「その姿で外出は認められんな。」


 咲妃は一瞬、文字通りに受け取ってしまい、顔を真っ赤にしてプンプンと腕を組んだ。


 「何よ!晴明さん、ひどいっ!もー知らない!」


お清はくすくす笑いながら、咲妃の袖を引いた。


 「さ、さっそく一緒に外に出ましょう。今日は町を少し歩いてみます?」


 咲妃はぷんぷんしたまま、お清に連れられて屋敷を出る。


 街を歩くと、平安時代の町並みや人々の生活に触れ、日常の中の小さな冒険を感じた。


 それでも咲妃の心の片隅には、屋敷で待つ晴明の視線がちらつき、なんだか胸が痛くて少し不思議な感覚になっていた。