――“転輪の符”。
 魂を時の彼方へ繋ぐ禁断の術。

 博雅は震える手でそれを受け取った。
「晴明、お前は……!」

 晴明はかすかに笑った。
 その笑みは、夜風に散る桜のように静かで、美しかった。

「いずれ……我が想いは……時を越える。
 たとえ千年ののちであろうとも……。」

 その言葉と共に、晴明は膝を折った。
 頬を伝う血が、赤い月に照らされて光る。
 博雅の叫びが、夜の京に響き渡った。

「晴明――――ッ!!」

 月が泣いていた。
 その光の粒が、まるで誰かの未来を探すように、
 ゆっくりと空へ昇っていった。