月日が経ち、咲妃は相変わらず未来への手がかりを探しつつも、晴明と式神たちのいる屋敷で穏やかに日々を過ごしていた。

晴明は依頼のお祓いで外出中で、屋敷は静けさに包まれていた。

 そんなある日、玄関の戸が静かに開き、博雅が真剣な面持ちで入ってきた。

「あれ、博雅さん、どうしたんですか?」と咲妃は慌ててお茶を差し出しながら尋ねた。

「すまぬ、咲妃殿。少々大事な話があってな……」

博雅は申し訳なさそうに目を伏せ、口を開く。

「実は、帝様がそろそろ咲妃殿に会わせろと言っておるのだ。前々からその命令があったのだが、晴明が何度も理由をつけて断っていた。」

 咲妃の心臓が一瞬止まったような気がした。

「帝って……ここの世界でいう、一番偉い人のことですよね?」

 博雅はにっこり笑い、肩をすくめる。

「まぁ、こうして晴明と過ごせているのも、帝様が甘い考えでおられるからでな。本来なら、屋敷に着いた時から、会わねばならぬ御方だ。」