「我名は、安倍晴明。」



 その声は低く、しかし透き通るように響いた。

 咲妃の心臓は一気に跳ねた。



(えっ、嘘……本物……?!)



 思わず目を見開き、息を詰めて彼を見つめる。

 胸の奥で、何かが小さく震える。


初めて会うのに、知っている――。


 歴史の本で何度も名前を目にしていた、憧れの人。

 晴明は咲妃の前に立ち、ゆっくりと手を伸ばした。

 その指先が咲妃の顎に触れ、クイッと持ち上げる。

 思わず息が詰まり、目が大きく見開かれた。