風がざわめく。
 晴明の袖がひるがえり、無数の札が宙に舞い上がる。
 印を結ぶその瞬間、空気が光を帯びた。
 金の線が闇を裂き、怨霊の咆哮が夜空を震わせる。

「我が名において命ず――鎮まりたまえ!」

 光と闇がぶつかり合い、爆ぜる。
 京の夜が白く染まり、次の瞬間、静寂が訪れた。
 怨霊の叫びが途切れ、風の音だけが残る。

 ……だがその静けさの中、血の滴る音がした。