聞こえるのは、遠くでざわつく人の声と、 自分の心臓が打つ音だけ。 ――どくん、どくん、どくん。 (私……いったいどうなっちゃうの……?) 咲妃はそのまま、どこかへと連れ去られていった。 風が彼女の胸のスカーフを攫い、空の高くでひらりと舞った。