「……まさか、平安時代……?」
その瞬間、喉が渇き、膝が震えた。
タイムスリップ。そんな馬鹿な話――信じたくないのに、
目の前のすべてが、その現実を突きつけていた。
と、そのとき。
先ほど逃げた女性が、数人の男たちを連れて戻ってきた。
「あの妖を捕まえてください! あの奇怪な服の娘です!」
「え、ちょ、違います! 私は妖じゃないです! 本当に人間で!」
言葉を重ねても、誰も聞いてくれない。
男たちは縄を持ち、咲妃の手足を縛り上げた。
「痛っ、やめて! 本当に違うの! 助けてっ!」
必死に叫ぶ咲妃。
だが、目と口に布を巻かれ、声は くぐもる。
涙が滲み、視界がぼやける。



