追いかけようとしたが、足が止まる。

 道行く人々がみな、咲妃を避けるように距離を取っていた。

 冷たい視線が、胸に刺さる。

 それでも、勇気を振り絞って、今度は通りかかった男性に話しかけた。


「あの! ここって、どこですか? 今、何年なんですか!?」


 男性は怪訝そうに咲妃を見て、短く答えた。


「……ここは平安の都。延暦十三年――七百九十四年だ。」

言葉の意味が頭に入ってこなかった。


 “平安”――“七百九十四年”――


 心臓が跳ねる。世界が一瞬、遠くなる。