「一体なんなの?!……撮影? ドッキリ? そんなわけ……ない、よね……」


 呼吸を整えながら、木の陰からそっと外を覗く。

 行き交う人たちは、誰もが本格的すぎる装束を身にまとっていた。

 繊細な刺繍、風で揺れる袖の長い衣。

 まるで――歴史の教科書の中から抜け出してきたような人々。


「……まさか、ほんとにタイムスリップとか……」


 咲妃はおそるおそるポケットからスマホを取り出した。

 スライドして画面を確認――圏外。

 LIMEも、SLSも、すべて接続できない。

 液晶に映る「No Signal」の文字が、現実を突きつけてくる。