「盗作されたの! ずっと温めて温めて、ようやく投稿して、コンテストに応募しようと思った矢先に、まったく同じ設定のが出て来たんです! 名前は違うけど、登場人物までほとんど一緒! ひどいよ、あんまりでしょぉ……」
大きく体を揺らしながら、ナツメと呼ばれた女の人は泣いている。
「……え、我が子って?」
キョトンとする私に、スマホ画面が差し出された。
ノベルと表示されたアプリは、どうやら自由に小説を投稿できる場所らしい。たくさんのタイトルとあらすじが並び、誰でも気軽に書いて読める仕様になっているようだ。
「ワタシ、作家になるのが夢でした。これは面白いと、手応えあったんです。ですが、もうダメです。同じレーベルなんですよ、コンテストの。ワタシの負け」
何ページか二つの小説を読んでみる。主な登場人物の設定はほぼ同じで、プロローグとなる最初の二文も一緒だ。
「たしかに、似てる。ナツメさんの投稿は一年半も前。こんなに瓜二つなんて、ありえない……ひどい」
うなだれるナツメさんの横で、私は唇を尖らせた。
私も絵を描くから分かる。自分が生み出した作品は特別で、真似されたとなれば怒りが込み上げるのも無理はない。絶望と言っても過言ではない。
『お気持ちお察しいたしますぞ。ナツメ様、まずはご注文を申し付けくだされ』
カウンター越しに、ぽてまろがゴロニャンと喉を鳴らす。
「そうね、そうでした。ワタシ、このコンテストで受賞できたら、食べたいと思っていたんです。ちらし寿司……母のちらし寿司をお願いします」
『かしこまりました。しばし、お待ちくだされ』
チリリンと首鈴が光って、ぽてまろがトテトテとこちらへ歩いて来た。祖母のレシピノートを頭に乗せながら、『困りましたね。いやぁ〜、まいったまいった』と繰り返している。
なんだか嫌な予感がして、視線を逸らしたのだけど、目の前にドデンッとノートが下された。
『カフカ殿。トキの庵の女将になって頂けませんかねぇ。チョチョイと注文の品を出してもらえたら良いので』
ヘラヘラと笑いながら、ぽてまろが目を細める。
「……え、ムリ。なにそれ? ムリムリムリ! 女将って? 私なんかに、できっこないよ!」
案の定、おかしな頼みをしてきた。
首がもげるくらい大きく振って、私はその場から一歩遠ざかる。
『まあまあ、そんなに重く受け取らずに。もっと肩の力を抜いて、気楽に考えてもらえれば良いので』
「ぽてまろは⁉︎」
『わたくしはドリンク担当でございまして。料理の方は、おトキさんだったのですよ』
大きく体を揺らしながら、ナツメと呼ばれた女の人は泣いている。
「……え、我が子って?」
キョトンとする私に、スマホ画面が差し出された。
ノベルと表示されたアプリは、どうやら自由に小説を投稿できる場所らしい。たくさんのタイトルとあらすじが並び、誰でも気軽に書いて読める仕様になっているようだ。
「ワタシ、作家になるのが夢でした。これは面白いと、手応えあったんです。ですが、もうダメです。同じレーベルなんですよ、コンテストの。ワタシの負け」
何ページか二つの小説を読んでみる。主な登場人物の設定はほぼ同じで、プロローグとなる最初の二文も一緒だ。
「たしかに、似てる。ナツメさんの投稿は一年半も前。こんなに瓜二つなんて、ありえない……ひどい」
うなだれるナツメさんの横で、私は唇を尖らせた。
私も絵を描くから分かる。自分が生み出した作品は特別で、真似されたとなれば怒りが込み上げるのも無理はない。絶望と言っても過言ではない。
『お気持ちお察しいたしますぞ。ナツメ様、まずはご注文を申し付けくだされ』
カウンター越しに、ぽてまろがゴロニャンと喉を鳴らす。
「そうね、そうでした。ワタシ、このコンテストで受賞できたら、食べたいと思っていたんです。ちらし寿司……母のちらし寿司をお願いします」
『かしこまりました。しばし、お待ちくだされ』
チリリンと首鈴が光って、ぽてまろがトテトテとこちらへ歩いて来た。祖母のレシピノートを頭に乗せながら、『困りましたね。いやぁ〜、まいったまいった』と繰り返している。
なんだか嫌な予感がして、視線を逸らしたのだけど、目の前にドデンッとノートが下された。
『カフカ殿。トキの庵の女将になって頂けませんかねぇ。チョチョイと注文の品を出してもらえたら良いので』
ヘラヘラと笑いながら、ぽてまろが目を細める。
「……え、ムリ。なにそれ? ムリムリムリ! 女将って? 私なんかに、できっこないよ!」
案の定、おかしな頼みをしてきた。
首がもげるくらい大きく振って、私はその場から一歩遠ざかる。
『まあまあ、そんなに重く受け取らずに。もっと肩の力を抜いて、気楽に考えてもらえれば良いので』
「ぽてまろは⁉︎」
『わたくしはドリンク担当でございまして。料理の方は、おトキさんだったのですよ』



