ホームセンターへと向かう道すがら、私が信号待ちをしていると、ふと赤く光るトマトや小さなピーマンを実らせているお宅を見つけた。
まだ六月なのに、もうあんなに夏野菜が実ってるんだ。そう思っていると、タヌちゃんがリュックからヌッと顔を出した。
「おっ、皆川さんの家だな。ここの家の餌は良いぞ。しっとりとした餌に、煮干しもくれるんだ」
どうもタヌちゃんは、私があの家に越してくるまで色々な家を転々として餌をもらっていたらしい。
いや、時々勝手に窓を開けていなくなるところからして、ひょっとして今でももらっているのかもしれない。
「タヌちゃん、勝手に外に出ちゃ駄目でしょ」
私がタヌちゃんをリュックに押し込むと、ちょうど信号が青に変わった。
そこからしばらくのどかな田んぼ道を走ると、目の前に巨大なホームセンターが見えてきた。
私はペット用カートにタヌちゃんを乗せると、さっそくペットフード売り場へと向かった。
「タヌちゃん、どの餌がいいの?」
私が聞くと、タヌちゃんはCMで見覚えのある一流メーカーの餌袋をぽんぽんと叩いた。
「これだ。これが美味い」
「これね。分かった」
少し高いけど、一度に食べる餌がそう多いわけでもないのでとりあえずタヌちゃんに言われた通りの餌を買い、支払いを済ませた。
「ふがっ、ふがっ、ふがっ」
と、急に荒い鼻息のような音が聞こえてきて私は身構えた。
な、何、この音……変質者?



