「お、終わったのか? ならば少し頼みがあるのだが」

 タヌちゃんはびろんと縁側に伸びたまま視線だけこちらに向けた。

「何か欲しいものでもあるの?」

 私がタヌちゃんの首のモサッとした毛を撫でながら言うと、タヌちゃんは「うむ」とうなずいた。

「坂を下りたところにホームセンターがあるだろう? そこでもう少し良い餌を買ってくれんか。今の餌はどうも味が合わん」

 どうもタヌちゃんは私の買ってきた一番安いキャットフードが口に合わないようだ。

 それにしては「んまんま」とか言いながら食べていたような気がするけど。

「別にいいよ。どうせ暇だし、やることもないし」

 私が縁側から家の中に入り、愛用のリュックを背負って外に出ようとした。

 ……が、なぜかずしりと重い。

 中を見ると、やはりというかタヌちゃんが入っていた。

「何してんの?」

「どうせ行くなら、わしも連れて行ってくれ。お前には餌の良し悪しなど分からんだろ」

 フンと鼻息を鳴らし馬鹿にしてくるタヌちゃん。

 確かに私に猫の餌の味の違いなど分からないけれど、五キロのコメと同等かそれ以上に重いタヌちゃんを背負って歩くのは普通に重い。

「ええ、疲れるよ」

「いいから。お前も少し体を鍛えたほうがいい」

「私が良くてもリュックが壊れるよ」

 とはいえ他にタヌちゃんを連れてホームセンターに行く方法も分からないので、私はタヌちゃんの入ったリュックを抱えて自転車のかごに乗せ、そのままホームセンターへと向かった。