とまあ、そんなわけで私はしゃべる猫「タヌちゃん」と一緒ん住むことになったのだけど、何でタヌちゃんが喋れるのかは本人にも分からないのだという。

「もう十五年以上も生きてるし、猫又になりかけてるのかもな」

 そう言って、タヌちゃんは前足をぺろぺろと舐める。

 ちなみに「タヌちゃん」という名前は祖母に付けてもらった名前らしい。やはり祖母も私と同じくタヌキに似ていると思ったようだ。

 だけどタヌちゃんは祖母の飼い猫というわけではなく、餌をくれる家のうちの一つといった認識だったらしい。

 私はタヌちゃんを見た。長い茶色の毛に、緑色の大きな目。右耳の先が桜の花びらみたいに小さくカットされている。調べたところによるとこれは地域猫のサインなのだという。

 初めは変な猫と暮らすなんてと思っていたけれど、よく考えたら、このがらんとした家に一人で済むのも何だか寂しいし、喋り相手がいるだけでもありがたい。

 そんなわけで、タヌちゃんは私のつかの間の相棒になったのだった。

「よいしょ」

 私は草刈りを終えると、肘で汗をぬぐい、草をまとめて軍手を脱いだ。

 縁側を見ると、タヌちゃんが白っぽいお腹を日に当ててポカポカと日向ぼっこをしていた。

 のんきだなあ。

 とはいえ、私もこの家を掃除したり買い物をしたりして、時間ができたらたまにハローワークに出かける程度のことしかしていないのだけれど。