タヌちゃんが橘さんを引っ張って行ったのは、私がミニトマトを植えている南側の庭だった。

 庭につくと、タヌちゃんは「にゃーん」と縁側に横になった。どうやら縁側に寝そべりおやつを食べたかったらしい。この贅沢者め。

「ああ、これが藍沢さんの植えてるミニトマトですか」

 タヌちゃんにおやつをあげながら、橘さんが私に笑いかける。

「は、はい」

「鉢が小さかったので、底面給水にしたのです」

 と、これは私たちの後を追ってきた耕太郎くん。

 どうやら鉢の下に水をためて根に吸わせる栽培方法を底面給水と言うらしい。

「なるほど、ちゃんと育ってるね。脇芽もちゃんと取ってるし」

 橘さんに褒められ、私はちょっとこそばゆいような気分になった。

 あ、そうだ。

 今日のお礼をしなきゃ。

 私は橘さんと耕太郎くんに何かお礼をしようと思ったけれど、冷蔵庫にはアイスもジュースもない。

 あるのは麦茶と……。

 私は今日の朝作った麦茶と、冷蔵庫に冷やしていた手作りゼリーを取り出した。

「あの……これ、暑いのでもしよかったら!」

 私は縁側に三人分の麦茶と庭で取れたミニトマトで作ったゼリーを出した。

「えっ、これ、手作り?」

 橘さんが驚いた顔をする。

「はい」

「もしかして、庭で取れたミニトマトですか?」

 耕太郎くんがゼリーの器を右から左からじっと見つめる。