「あ、猫ちゃん」

 橘さんがタヌちゃんを見つけてしゃがみ込む。
 するとタヌちゃんは餌を貰えると思ったのか橘さんの足にスリスリとすり寄って来た。

「うわあ、大人しいし人懐こい。なんだか犬みたいだ」

 橘さんは感激したように目を輝かせると、車に戻り、何かを取って来た。

「……これ、実家の猫にあげようと思って買ってきたやつだけど食べるかな」

 橘さんが手に持った猫用おやつを見るなり、タヌちゃんは目の色を変えて橘さんに飛びついた。

「わっ、これ好きみたいだね。あげても良い?」

「は、はい」

 たが橘さんがおやつをあげようとした瞬間、タヌちゃんはとつぜん橘さんのTシャツの裾を咥え、ぐいぐいと家のほうへと引っ張りだした。

「なに? どうした?」

 目を丸くしながらタヌちゃんについて家の庭のほうへ行ってしまう橘さん。

「もう、タヌちゃんったら!」
「あ、待ってください!」

 私と耕太郎くんも、慌ててタヌちゃんの後を追って庭のほうへと向かった。

「にゃあん」

「どうしたの、タヌちゃん」