「なんか……めんどくさそう」
それに思い付きで始めた家庭菜園だし、日記でもダイエットでも英会話でも、私には長く続けられたものなんて一つもない。仕事だってそう。
はりきって庭を畑にしたところで、家庭菜園が長く続く保証なんてどこにもない。
「プランター菜園がうまくいったら畑のことも考えてみる」
私が言うと、耕太郎くんは少しがっかりしたような顔をした。
「そうですか。面白そうだと思ったんだけどな。ま、藍沢さんの土地ですしね」
とりあえず、私は大きなカートにプランターと土を積みこんだ。
はあ。大きな出費だけど仕方ない。新鮮な野菜のためだ。
「ところでこれ、どうやって持って帰ったいいんだろう」
私は大量の土と大きなプランタ―を手に途方に暮れた。
耕太郎くんも小さくうなる。
「そうですね。僕たち、自転車で来ましたし……後で車で取りに来るとか?」
「でも私、車持ってないし」
「免許も無いんですか?」
「免許は一応取ったけど……」
「じゃあ、お店の人に聞いたら配送用の車とか貸してくれるんじゃないですか」
そう言うと、耕太郎くんは花の苗売り場で水をあげている店員さんに声をかけた。
「橘さーん」
どうやら耕太郎くんのなじみの店員さんらしい。



