夏とトマトとたぬき猫

 空の青と、草木の濃い緑のコントラストがまぶしい雲一つない空の日。
 私と耕太郎くんは園芸店「ワイルドベリー」に出かけることになった。

「おまたせしました」

 私が喉をゴロゴロと鳴らすタヌちゃんを撫でていると、黒い自転車に乗った耕太郎くんが現れた。

「いきましょう」
「うん」

 私たちはタヌちゃんに手を振ると、晴れ渡る空の元、二人でワイルドベリーへと出発した。

 それにしても――。

 私は耕太郎くんの後について自転車を走らせながら近所の家の庭先をじっと見つめた。

 この辺りでは都会よりも土地の値段が安いせいか一軒家が多く、庭先で家庭菜園をやっている家も多い。

 猫の額ほどの小さい庭に、農家さながらの大きな庭。私みたいにプランターでミニトマトやナスを育てる家が次々に目に入って来る。

 家庭菜園をやっている家が近所にこんなにあるだなんて知らなかったな。

 そういえば兄が、子供ができたとたん、町に住んでいる妊婦や小さい子連れがやたら目に付くようになったって言ってたっけ。

 「世界の解像度が上がったよ」とそう言って笑っていた弟の顔を思い出す。

 その時は何を言っているのかよく分からなかったけど、今なら少しだけその気持ちも分かるような気がする。

 少しだけ解像度の上がったこの世界は、以前よりほんの少しだけ輝いて見えた。