夏とトマトとたぬき猫


 恐る恐る聞いてみると、耕太郎くんはちらりと腕に付けたスマートウォッチを見た。

「いいですが、今日はこの後家庭教師が来るので明日でもいいですか?」

「うん、もちろん。家庭教師をつけてるんだ。勉強熱心だね」

 よく考えたら家も大きいし綺麗だし、実はお坊ちゃまなのかもしれない。

 私が何の気なしに言うと、耕太郎くんは眉一つ動かさずにこくりとうなずいた。

「はい、学校にも通っていませんし」

「あっ、そうなんだ」

 もしかして、不登校ってやつなのだろうか。

 私がびっくりした顔をすると、耕太郎くんは小さく息を吐いた。

「おかしいと思わなかったんですか? 土日でもないのに平日の昼間に小学生が家にいて」

「いや、そこまで深く考えてなかったし! 夏だからもう夏休みなのかと……ほら、無職だから曜日感覚もほとんどないしさ」

 アハハと笑うと、耕太郎くんは呆れたようにため息をついた。
 ずいぶん呑気な人間だと思われたかもしれない。

 でも仕方ない。私は自分一人が生きていくのに精いっぱいで、他の人の人生まで気にする余裕はないのだ。

「じゃあ、明日はよろしくね。約束」

 私は耕太郎くんの手を無理やり取って指切りげんまんをさせた。

「子供みたいですね」

 耕太郎くんがあきれたように笑う。

「いいでしょ、別に」

 誰かと約束をして出かけるなんて久しぶりだ。

 それだけで、なんだか自分まで小学生に戻ってしまったみたいで、胸がどきどきするような気がした。