私は耕太郎くんを無理矢理家の中に引っ張っていくと、麦茶を出し、冷蔵庫に入っていたスーパーのカットサラダを透明なガラスの器に盛りつけた。
中央に半分に切ったミニトマトをちょこんと置くと、不思議なものでなんだかいっちょ前の料理みたいになった。
「いただきまーす」
私はサラダに冷蔵庫にあった胡麻ドレッシングをかけ、ミニトマトを口に入れた。
完熟じゃないと耕太郎くんが言ってたから少し酸っぱいかなと思ったけれどそんなことはなく、甘みと酸味がほどよく新鮮なミニトマトの味が口いっぱいに広がった。
うん、美味しい。
キラキラ光る、夏の味だ。
「んーー、美味しい!」
私が頬を押さえ上を向いて喜びをかみしめていると、耕太郎くんは口角を少し上げて笑った。
「今日は記念すべき初収獲の日ですね」
「うん。なんかこれ、あれみたいな気分。俵万智の」
「ああ、サラダ記念日?」
「そうそう」
私はカレンダーを見た。
「今日って何日だっけ?」
「六月二十四日ですね」
「じゃあ、六月二十四日はミニトマト記念日ってことで決まり!」
私はカレンダーにピンクの蛍光ペンで丸を付けた。
今日は私の記念すべき初収獲の日。
きっとこれから何か素敵なことが始まる、そんな予感がした。
小さな幸せがキラキラ光る、そんな夏の始まりの日だ。



