夏とトマトとたぬき猫

「耕太郎くん、耕太郎くん!」

 耕太郎くんは、出会った時と同じように庭先でミニトマトの苗の手入れをしていた。

 と、ここで私は気付いた。

 耕太郎くんのプランターには数えきれないほどたくさんのミニトマトが実っている。

 ミニトマトを育てるのが初めての私とは違い、耕太郎くんにとって、ミニトマトが実ることはさほど特別なことじゃない。

 こんなことで坂の上の家まで呼ばれるのは迷惑じゃないかな。

 そんな思いが一瞬、私の頭によぎったが、ここまで来てしまったんだからしょうがない。

 それに耕太郎くんにとっては当たり前のことでも、私にとって初めての収穫なのには違いないのだから。

「耕太郎くん」

 私は耕太郎くんに声をかけた。

「はい?」

「ミニトマトに実が付いたの」

 私が言うと、耕太郎くんは目を大きく見開いた。

「マジすか」

 耕太郎くんは目を少し見開き、「ちょっと待っててください」と言って庭石をじゃりじゃり踏みつけた後、玄関から改めて出てきた。

「行きましょう」

 心なしか高揚している耕太郎くんの横顔に私も何だかどきどきする。

「うん!」

 二人で坂の上の家へと向かう。青い空には白い入道雲が大きな山を作っていた。