私は慌てて、窓の外に出た。

「ミニトマト……なってるじゃん!」

 さっきまで水をあげに外に出ていたのに、葉っぱの影になってて全然気づかなかった!
 
「ねえねえ、タヌちゃん、すごいねえ」

 私はタヌちゃんの背中をバシバシとたたいた。

「痛い痛い」

「あ、ごめん」

 タヌちゃんも外に出て、ミニトマトの鉢の周りをフンフン嗅ぎまわる。
 
「……トマトの匂いだ」

「あ、待って。あんまり触らないで! あ、そうだ。耕太郎くんにも教えてあげないと」

 と思ったけれど、耕太郎くんの連絡先もメールアドレスも何も知らない。

 私は自転車に飛び乗り、家の前の坂を駆け下りた。

 少し汗ばんだ額に、びゅんびゅんと夏の風が当たる。

 たかがミニトマトだし、別に教える必要はないのかもしれない。でも私は今猛烈に、タヌちゃんと耕太郎くんと、三人で初めてできたミニトマトを祝いたい気分だった。