「あ、見えてきた。あの家だよ、私の家」

「広いですね」

「でしょ? 昔はおじいちゃんとおばあちゃんが住んでたんだけど、二人とも亡くなったから、今は私とタヌちゃんの二人で住んでるんだ」

 私は家の前に自転車を停めると、耕太郎くんをミニトマトの置いてある庭へと案内した。

「これこれ。これ、私のミニトマトなんだけど、全然実がならなくて」

 それは、数週間前に私がホームセンターで買ったミニトマトの苗だった。

 これがあれば憧れの自給自足ができると思っていたのに、ミニトマトは実をつけるどころか茎もヒョロヒョロで葉もしおれており、何だか元気がないように見える。

 私がトマトの鉢を指さすと、耕太郎くんは鉢の前にしゃがみこんだ。

「これは――」

「どう? 何か病気? それとも暑さのせい? そこのホームセンターで買った苗なんだけど」

「はっきり言っていいですか?」

 耕太郎くんはじっと私の顔を見つめる。

「うん」

「はっきり言って、これはシンプルに植木鉢が小さすぎますね」

「へっ」

 私が耕太郎くんの思わぬ返事にがくっとよろけていると耕太郎くんは真面目な顔で鉢を指さした。

「ほら、植木鉢の底から根っこが出ちゃってる。狭そうでしょ。これじゃ水も栄養もろくにとれない」

「ほ、本当だぁ」