柔らかな初夏の日差しの中、私は目を覚ました。

 茶焼けした天井の木目には、昭和にタイムスリップしてきたみたいな黄ばんだ電球がチカチカと光っている。

「そういえば私、おばあちゃんの家で暮らしてるんだっけ……」

 私が眠い目をこすりながら呟くと、ヌッと茶色い毛むくじゃらの影が視界に現れる。

「そうだぞ。もう忘れたのか、このマヌケめ」

 私は布団を前足でフミフミする茶色い毛むくじゃらをひょいと持ち上げた。

 ずしりと細い腕に体重を感じる。恐らく五キロの米袋よりは重いだろう。

「お、重い。タヌちゃんって猫なのに重いのね」

 私が言うと茶色いもじゃもじゃの毛のタヌキみたいな猫――タヌちゃんは黄緑色をした目を細めてフンと鼻で笑った。

「何を言う、貴様が貧弱なだけだ。筋トレをせい、筋トレを」

「そんなこと言われても」

「それより、腹が減ったぞ。早く飯を寄こせ」

「はいはい」

 私はのそのそと布団から起き上がると、台所にしまっていたキャットフードを取り出し、皿に開けた。

 とたん、タヌちゃんは「んまんま」と小さい声を出しながらキャットフードを食べ始める。

 私はキャットフードにがっつくタヌちゃんを横目にため息をつくと、薄いグレーのカーテンを開けた。

 南向きの庭には、雑草たちが旺盛に育っている。

 決めた、今日のミッションは庭の草むしりにしよう。

 私はトーストとインスタントのスープを胃に流し込むと、縁側へと出た。

「どこへ行くのだ、美月」

 タヌちゃんが不思議そうに見上げてくる。

「別に。庭の草むしり」

 私は腕まくりを一つすると、さっそく朝の作業に取りかかった。