雨の日は、猫を 撫でたくなる

 「うわ、最悪!」
夏休み明けの学校は、本降りの雨の日だった。
お父さんもお母さんも今日はいない。結婚記念日の旅行に行っているからだ。
古い一軒家の縁側に出た。雨がうるさくなり続けている。
猫が首の鈴を鳴らしながら私の隣に座る。全く、素直じゃないなぁ。
どうせ、撫でてほしいんでしょ。
一人娘で、親がいないと誰もいない私にとって、猫はとても大事な存在だ。
小学一年生の頃、ショッピングモールのペットショップで見つけた猫。
気だるそうで、私の方には見向きもしてくれなかったけど、すごくかわいかった。
人間だったら、嫌な子だな、と思うのに猫だったら不思議と思わなかった。
ペットショップの店員さんがそばに寄ってきて、声をかけてきたんだった。
茶色の三毛猫。メスで、愛知県産まれで、ジャンプが得意。
特徴をいろいろ教えてくれて、一気に好きになった。
一目惚れして、お父さんにおねだりしたけど、すぐには気に入ってくれなかった。
そのショッピングモールに行く度、毎回、毎回、おねだりしたっけ。
そしたら、5回目でやっと決断してくれたよね。
「懐かしいね」
そうだね、って答えてくれるわけないのに、猫に語りかけた。
猫の名前は「ミオン」という。普通の猫は「みゃおん」と鳴くのに、この子は「みぉん」と鳴くからだ。
お母さんには、ありきたりな名前じゃない、と言われたが、しょうがない。