君たちを繋ぐパレット

「にゃーちゃん! 行ってきまーす」
「お家の事……ちゃんと見張っててね?」

パパとママは朝になると仕事に出かける。ここからは……わたしが家を守る時間。

窓の外をじっと眺める。不審な人はいないか?いつもと変わりはないか?
じっと微動だにせず、外を見続ける。パパとママは「にゃーちゃんにしか出来ないから。よろしく頼んだよ」と言ってくれるから……わたしはいつも気合が入っている。

(んっ……?)
(……何か、今……動いたよね?)

目の前は、一軒家が建っている。家の周りは綺麗に掃除がされていて、ゴミも落ちていないし、草も生えていない。何かあれば、わたしのセンサーにすぐに引っかかる。

今日はなぜか……家の端っこで「何か」がちょろっ……ちょろっ……と動いているような気がした。

(何だろう? 何かがたまに動いてる気がするのよねー……)
(パパとママが帰ってきたら……これは報告しないといけないな……)

ずっと見ているのも疲れるので、時々サボって寝ていることは、パパたちには内緒。

(ふあぁぁぁ……寝たなぁー……)

両腕をぐっ……ぐっ……と伸ばし、ストレッチを入念に行う。そしてまた外のパトロールに目を光らせる。忙しい。

(んっ……? やっぱり……さっきの場所)
(絶対、何かいるよね……)

朝と同じ場所。チラチラとたまに何かが動いている。じっと見続けていると、いよいよ「何か」が動き出し、半分以上が家の隅から姿を現した……。

(えっ……!?)

わたしと同じ、猫の姿。
そして……見覚えのあるハチワレのおでこ。黒と白だし……あれは……

(ハチ……!?)

一瞬わたしは頭が真っ白になった。同じクラスで先生から授業を受けていた……あのハチなの?まさかね。……でも、そっくりだ……

「にゃー!!(ねぇー!!)」
「にゃぁーーー!?(ハチなのーーー!?)」

わたしの声が聞こえていないかのように、ハチに似た猫は周囲を警戒しながら見回している。のそっ……のそっ……と鋭い目で左右を見ながら、家の周囲を歩き回っていた。

(聞こえてないんだ……)
(どうしたら良いんだろう? わたしの力じゃ……窓も開けられない)

窓を1枚隔てて、久し振りに見る仲間。それがハチじゃ無かったとしても……確かめたい。どうしたら良いんだろう?と頭を捻る。

(あっ……そういえば……)

わたしは校長先生に最後、言われた言葉を思い出した。

「空を見上げなさい。寂しくなったら」
「君たちには力が備わってる」
「君たちは、いつだって……空を通じて繋がってるんだ」
「仲間の事を想う時……空を見上げなさい。きっと想いは通じるから」

(空を見上げなさいって言ってたな……あれって……どういうことだったんだろう?)

わたしは家の中から、窓の外に見える空を見上げた。

(校長先生……? 空、見たよ。)
(力があるって……どんな力があるの? 教えてよ)
(あの猫と……話をさせてよ……)

……ザーーッ……

頭の中に一瞬だけ砂嵐のような音が聞こえた気がした。

(うわっ……何? 今の音)
窓の外を見ると、さっきの猫もわたしと同じようにビクッ!と動いていた。そして……空を見上げた。

(あれっ……? 何だこれ……?)

わたしの頭の中に、しゃべってもいないのに……ハチの声が聞こえる。

(えっ? ハチ? ハチなの?)
(……え? この声……クロか? どこだ?)
(やっぱりハチだ! 前だよ前。ハチの目の前の家!)
(どれだ……? あっ! クロ!)

ハチだ!
やっぱりハチだった!
わたしの家の前まで、ハチが駆け寄ってきた。

ハチ……