「……そんなに酷い怪我なの……?」
「あぁ。……もう難しいらしい」
病院から帰ったパパ。ママと小声で話をしている。……きっとハチのことだと思う。
念願だった、このお家に入ることができたハチ。でもその姿は……直接見るのもはばかれるくらい痛々しいものだった。
「にゃぁ……(ハチ……)」
「にゃっ(おう)」
弱々しく目を開くハチ。
(久し振りなのに……)
(ははっ……そうだな……)
(痛い……?)
(痛いに決まってるだろ……)
(せっかく……お家に入れたのにね……)
(どうせこんな体だからな……すぐ捨てられるんじゃねぇか?)
(そんなこと……言わないでよ)
(ふん……どうせ人間なんて、そんなもんだろ?)
目線をわたしから外し、何か考え込んでいるように見えるハチ。無理もない。ハチはあまり人に対して良い印象がないから。
「あなた……どうするの?」
「ん? 何が」
「……あの子」
パパとママの会話を、ハチも耳を澄ませてじっと聞いている。心臓が口から出てしまいそうなくらい、ドキドキする……。
「この子? 出会ったのも何かの縁だろ」
「……」
「最後まで、看取ってあげようと思ってね。……良いかな」
「……うん。外は寒いし……危ないしね」
「あぁ。今更、里親を募集しても……難しいだろうからね」
「そうね。出会ったのも……何かの縁かもね」
「うちに来て良かったと思ってもらえるように、最後までちゃんとお世話するよ」
パパとママの話を聞いて、わたしは涙を止めることができなかった。ハチも……耳だけパパたちの方を向けて、小刻みに震えていた。
(……良かったねハチ。また……一緒にいれるね)
(……)
(よろしく)
(……あぁ)
「頑張って良かった」わたしは心からそう思った。パパとママ。そして……ハチと一緒に生活ができる。それは短い間なのかも……知れないけれど。
(このお家、とっても暖かいんだよ?)
(……ふぅん)
(え? 暖かくない?)
(まぁ……)
(でさ、パパとママも……すっごい優しいの)
(……そうか?)
相変わらず、減らず口を叩くハチ。でも……わたしには分かっていた。ハチの表情が……どんどん優しくなっていることに。
(本当はね。あんたと一緒に遊びたかったけどね)
(……もう俺、飛べねぇよ)
(今だったら、わたしの方が運動神経、良いね)
(うるさいな……)
ほとんど寝たまま、動くことができないハチ。わたしはできるだけたくさん話をするようにした。……だって、いつまでハチと話ができるか分からないからね。
「はい、はっちゃん。ご飯だよ」
ハチの名前は「はっちゃん」になった。ハチワレだからなんだって。
良いね、元々の名前と近くてさ。わたしなんて「にゃーちゃん」だよ?羨ましいよ。パパとママにわたしより優しくしてもらっちゃってさ……
「無理しなくて良いから。食べられるだけ食べてね」
「にゃ……(ありがとう……)」
ここの所、ハチもママたちにちゃんとお礼を言うようになった。
わたしはもう……それだけで、このお家にハチが来れて良かったと思ってる。
でも、ほっとしたのもつかの間……
次はわたしの番だなんて、この時は全く予想してなかった。
「あぁ。……もう難しいらしい」
病院から帰ったパパ。ママと小声で話をしている。……きっとハチのことだと思う。
念願だった、このお家に入ることができたハチ。でもその姿は……直接見るのもはばかれるくらい痛々しいものだった。
「にゃぁ……(ハチ……)」
「にゃっ(おう)」
弱々しく目を開くハチ。
(久し振りなのに……)
(ははっ……そうだな……)
(痛い……?)
(痛いに決まってるだろ……)
(せっかく……お家に入れたのにね……)
(どうせこんな体だからな……すぐ捨てられるんじゃねぇか?)
(そんなこと……言わないでよ)
(ふん……どうせ人間なんて、そんなもんだろ?)
目線をわたしから外し、何か考え込んでいるように見えるハチ。無理もない。ハチはあまり人に対して良い印象がないから。
「あなた……どうするの?」
「ん? 何が」
「……あの子」
パパとママの会話を、ハチも耳を澄ませてじっと聞いている。心臓が口から出てしまいそうなくらい、ドキドキする……。
「この子? 出会ったのも何かの縁だろ」
「……」
「最後まで、看取ってあげようと思ってね。……良いかな」
「……うん。外は寒いし……危ないしね」
「あぁ。今更、里親を募集しても……難しいだろうからね」
「そうね。出会ったのも……何かの縁かもね」
「うちに来て良かったと思ってもらえるように、最後までちゃんとお世話するよ」
パパとママの話を聞いて、わたしは涙を止めることができなかった。ハチも……耳だけパパたちの方を向けて、小刻みに震えていた。
(……良かったねハチ。また……一緒にいれるね)
(……)
(よろしく)
(……あぁ)
「頑張って良かった」わたしは心からそう思った。パパとママ。そして……ハチと一緒に生活ができる。それは短い間なのかも……知れないけれど。
(このお家、とっても暖かいんだよ?)
(……ふぅん)
(え? 暖かくない?)
(まぁ……)
(でさ、パパとママも……すっごい優しいの)
(……そうか?)
相変わらず、減らず口を叩くハチ。でも……わたしには分かっていた。ハチの表情が……どんどん優しくなっていることに。
(本当はね。あんたと一緒に遊びたかったけどね)
(……もう俺、飛べねぇよ)
(今だったら、わたしの方が運動神経、良いね)
(うるさいな……)
ほとんど寝たまま、動くことができないハチ。わたしはできるだけたくさん話をするようにした。……だって、いつまでハチと話ができるか分からないからね。
「はい、はっちゃん。ご飯だよ」
ハチの名前は「はっちゃん」になった。ハチワレだからなんだって。
良いね、元々の名前と近くてさ。わたしなんて「にゃーちゃん」だよ?羨ましいよ。パパとママにわたしより優しくしてもらっちゃってさ……
「無理しなくて良いから。食べられるだけ食べてね」
「にゃ……(ありがとう……)」
ここの所、ハチもママたちにちゃんとお礼を言うようになった。
わたしはもう……それだけで、このお家にハチが来れて良かったと思ってる。
でも、ほっとしたのもつかの間……
次はわたしの番だなんて、この時は全く予想してなかった。



