(そうか……そういうことなんだ……)

そう思った方が、パパとママの行動に納得がいった。でもなぜなのか理由は分からない。少しだけ心のもやもやが晴れたわたしは、部屋のパトロールを再開することにした。

「にゃっ……(よっ……と)」
トンッ……トンッとカーテンレールの近くから下りて行き、パパとママがいない部屋へ。洗濯物……掃除機……お布団……「いつもと違うものは無いかな」とわたしはチェックに余念がない。ヒクッヒクッと鼻を鳴らしながら、一つずつチェックする。

(まぁ、大丈夫そうね……)
(んっ?)

小さく細い何か。真っ黒だ。

(……何よ、これ)
(朝、無かったじゃないの)

「邪魔だ」と思い、パクリと飲み込んだ。

夜も0時を回り、パパとママは歯を磨いている。そろそろ寝る時間が近い。本音はもっと遊びたいけど……明日も早いの知ってるから。我慢してあげようかな。

「よしっ……にゃーちゃん? 寝るよ」
パパがわたしに声をかけて、お布団に入る。
「……」
「にゃーちゃん。どうするの? ストーブ消えたよー」
「……」
「にゃーちゃん?」
「……」

(お腹……痛いな)
(何だろ……? 動くと痛い……)

「にゃーちゃん? どうした?」
「……」
うずくまったまま、しゃべることができない……動くことも。痛い……お腹が。

(痛たたた……何なのこれ……)

「ん? どうしたの?」
「いや……にゃーちゃんの様子がいつもと違うんだよ……」
「えっ?」
「急に動かなくなったんだよな……どうしたんだろう?」
「……にゃーちゃん?」
「ほら……返事もしないだろ?」

「んーーー……(痛い……)」
わたしは痛くて鳴くことができない。喉の奥から音を何とか絞り出すので精一杯……。

「何か変なもの……食べたの? あなたは」
ママが頭を撫でながら話かけてくる。

(……!)
(もしかして……さっきの黒いやつ?)

「ちょっと……どうしよう」
「病院、開いて……るわけないよな……」
パパが真剣な目で電話を見てる。

「……ここ……ちょっと電話してみようか」
「すいません……夜分に失礼いたします……」
わたしは夜間の動物病院へと運ばれた。一番最初の日、女の人に入れられていた……あの檻に入って。
知らない男の人は、先生らしい。わたしのお腹を触って、冷たい液体を塗り付けた。お腹を触られるのは……大嫌いだけど……抵抗したくても力が入らない。その後、変な機械でお腹の辺りを触ったり、撮影したりされた。

「何か小さい物を飲み込んでるみたいですね」
先生らしい人は、真面目な顔でパパに伝える。パパも……顔が少し白く見える。

「えっ……そうなんですか……」
「たぶん……影からすると、ゴムの端切れみたな感じだな……」
「ゴム……」
「写真で見ると、もう腸の方に移動しているので……このままウンチと一緒に出ると思いますよ」
「本当ですか……」
「お腹を開けなくてもたぶん大丈夫だと思いますので……このまま様子を見ても良いかも知れないですね」
「はい……ありがとうございます」
「また様子が急に変わったら、明日の昼に来て下さい。今は夜間なので……出来る処置が限られてるんです」
「……はい。分かりました」

帰りの車の中で、パパは檻に入れられているわたしに向かって「ごめんね」「ごめんね」と何度も繰り返していた。

……ううん。

わたしが「ごめんなさい」だよ?
勝手に落ちてるやつ、食べちゃったんだから。

変なの食べて、ごめんなさい。

優しいパパとママを疑って
本当にごめんなさい――