ラティアが自身の奇病であった【宝石の病】を治してから、4ヶ月が経過した。

 そして、そんなラティアがこのラピティーア国の王として即位する戴冠式の日が着々と近づく中、ラティアの元に一通の手紙が届く。

 その手紙にはラティアの親友である伯爵令嬢であるレミリアからであった。

「レミリアからの手紙。何かしら?」

 ラティアは仕事部屋である執務室でレミリアから届いた手紙を開けて目を通し始める。
 


 ラティアへ
 元気にしているしら?
 私は特に変わりなく元気にしているわ。
 そう、私、近々、ラピティーア国から他国へ移り住むことになったから、その前に一度会って話したいのだけれど。予定が合う日、手紙の返事で教えてほしいわ。

「そうよね、お互い忙しくて、数年も会っていなかったわ」

 ラティアはそう呟き、レミリアへの返事を返す為に机の引き出しから、紙と封筒を取り出し、ペンにインクをつけて返事の文章を書き始める。
 


 ラティアとレミリアが会うことになったのは、夏真っ只中の7月の始まり頃であった。

「久しぶりね、ラティア」
「そうね。元気にしていた?」
「ええ、元気にしていたわよ。あ、そうそう、手紙に書いたと思うけど、私、他国に移り住むことになったの」
「そうなのね。今みたいにこうして気軽に会える距離じゃなくなるわね」
 
 ラティアはそう言い、注文し、店員が持って来てくれた珈琲が入った白いマグカップを手に持ち、口に含み飲むと目の前にいるレミリアは寂しげな顔をする。

「そうね、けど、距離が離れていたとしても、同じ空の下で生きているんだもの。寂しいけれど、会いたくなったら私から会いに行くわよ」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるんじゃない」
「そう言えば、あの病は大丈夫?」

 レミリアの問いにラティアは頷き返す。

「ええ、実はもう治ったの。手紙で報告しようと思ったのだけれど、やっぱり自分の口から伝えたくて」
「そうなのね、よかった」

 レミリアには自分が奇病である宝石の病に侵されていることを教えていた。だからこそ、ラティアは自分の口から治ったということを伝えたかったのだ。



 時間が経過し、ラティアとレミリアは思う存分話して満足したのかカフェを出た。

「今日は楽しかったわ。ありがとう、ラティア」
「私も久しぶりに会えて、色々話せて嬉しかったし、楽しかったわ」
「ラティア、私は戴冠式の日、見に行くことは出来ないけれど、貴方がこの国の新しい王になることを心から祝福するわ」
「ありがとう、レミリア」

 ラティアはレミリアを見送ってから、待っていてくれていた自身の近衞騎士の一人であるハレクと共に歩き始めた。