楽しくにぎやかに友だちと盛り上がっているたっちゃんからそっと離れた。
「七嶋くんと同じ1組だったの」
「ラッキーじゃん。七嶋くん、かっこいいよね」
「一般進学コースの中では断トツでイケメン」
「彼女いないみたいだし、本気で狙ってみよっかな」
女子たちがたっちゃんたちのグループを眺めながら会話している。
僕は昇降口から校舎内に入り、クラス替えで場所が変わった自分の靴箱を探し出し、上履きに履き替えて2年5組の教室を目指した。
5組の教室内に入れば、すでにそこかしこでグループが出来あがって盛り上がっている。
僕はそれに構わず黒板に貼り出されていた座席表で自分の席を確認した。
――さくらば……っと、窓側から2列目の1番後ろだ。
そう悪くない位置。
席に座ってタブレットを取り出し、学習を開始する。
「うわ、もう勉強してるやついるよ」
「テストの総合点、毎回学年トップの桜庭優陽だよ。1年の時も同じクラスだったじゃん」
「え? あんなやつ同じクラスに居た?」
「お前ひどいな。同じクラスの男くらい覚えてろよ」
「存在感なさすぎて気づかなかったわ」
「なんか見た目に気を遣ってないっていうか、見るからにダサいよな。人生つまらなさそう」
「桜庭って、陸上部の七嶋と仲良くしてるらしいけど」
「え? 七嶋ってスーパー一軍じゃん。何で?」
「七嶋って性格もイケメンらしいよ。ぼっちのやつを放っておけないんじゃない」
「やっさしー」
聞こえよがしに話されていても、僕は聞こえない振りをしてタブレットの画面に集中した。
同じクラスで1年間過ごしたとしても名前すら覚えてもらえないくらい、僕は存在感が薄い。
人生つまらなさそうとか言われてしまう存在。
――それでいい。
僕は咲良菜緒の隠し子なんだから、隠れて生きていればいい。
顔の半分を隠す分厚いレンズの大きな眼鏡をかけているのも、成長するに連れて、咲良菜緒の生き写しのようにどんどん似てきた目鼻立ちを隠すために小学6年生からそうしている。
なよなよしている。女顔。色白。線が細い。
男に言われたって少しも嬉しくない言葉を昔から素顔に浴びせられてきた。
小学校の時は「おまえ、女子よりめちゃくちゃかわいい顔してるけど、本当に男なのかよ」と、上級生の男の子たちに服を剥かれそうになったこともあって、その度にたっちゃんが守ってくれていた。
始業式のために体育館に移動するよう校内アナウンスが流れる。
教室から廊下へとはき出された生徒が体育館を目指して一斉に動いていく。
入学式は今日の午後からだから、体育館に集まるのは2、3年だけ。
一般進学コースの面々はどこか高揚している。
始業式には芸術総合コースに在籍中の有名人たちが参加するからだ。
「今日、一条琉唯は学校来てるかな?」
「主演のネットドラマの撮影でこないんじゃない? あれ視聴者数すごいらしいよ」
「あのドラマ、ちょっと内容むずいけど、面白くて続き気になる」
「琉唯くんの役作りの金髪マジで似合っててかっこいいよね」
「ノアちゃんも来てるかな?」
「ノアちゃん、インスタフォロワー数10万人突破してたよ」
「細いし、かわいいよねー。憧れる」
「今のピンクのハイトーンの巻き髪ロングもかわいいよね」
「琉唯くんとノアちゃん付き合ってるってマジなのかな?」
テレビやネットで活躍する有名人の学校でのレア姿を見られるのだ。
テンションが上がって当然だった。
それ目的でこの高校に進学した人も多いだろう。
2、3年が集って埋められた体育館は各クラス二列で整列していた。
芸術総合コースは体育館の右端に固まって整列しているから、2年が並んでいる位置からはほぼ見えない。
「一条琉唯いないっぽい」
「残念。ってか、ほとんどこういう式には参加していないよね」
「忙しいんじゃない? いちばん売れっ子だから」
特に調べようとしなくても、一条琉唯の情報は勝手に周りから入手できる。
――助かった。居ないんだ……。
「七嶋くんと同じ1組だったの」
「ラッキーじゃん。七嶋くん、かっこいいよね」
「一般進学コースの中では断トツでイケメン」
「彼女いないみたいだし、本気で狙ってみよっかな」
女子たちがたっちゃんたちのグループを眺めながら会話している。
僕は昇降口から校舎内に入り、クラス替えで場所が変わった自分の靴箱を探し出し、上履きに履き替えて2年5組の教室を目指した。
5組の教室内に入れば、すでにそこかしこでグループが出来あがって盛り上がっている。
僕はそれに構わず黒板に貼り出されていた座席表で自分の席を確認した。
――さくらば……っと、窓側から2列目の1番後ろだ。
そう悪くない位置。
席に座ってタブレットを取り出し、学習を開始する。
「うわ、もう勉強してるやついるよ」
「テストの総合点、毎回学年トップの桜庭優陽だよ。1年の時も同じクラスだったじゃん」
「え? あんなやつ同じクラスに居た?」
「お前ひどいな。同じクラスの男くらい覚えてろよ」
「存在感なさすぎて気づかなかったわ」
「なんか見た目に気を遣ってないっていうか、見るからにダサいよな。人生つまらなさそう」
「桜庭って、陸上部の七嶋と仲良くしてるらしいけど」
「え? 七嶋ってスーパー一軍じゃん。何で?」
「七嶋って性格もイケメンらしいよ。ぼっちのやつを放っておけないんじゃない」
「やっさしー」
聞こえよがしに話されていても、僕は聞こえない振りをしてタブレットの画面に集中した。
同じクラスで1年間過ごしたとしても名前すら覚えてもらえないくらい、僕は存在感が薄い。
人生つまらなさそうとか言われてしまう存在。
――それでいい。
僕は咲良菜緒の隠し子なんだから、隠れて生きていればいい。
顔の半分を隠す分厚いレンズの大きな眼鏡をかけているのも、成長するに連れて、咲良菜緒の生き写しのようにどんどん似てきた目鼻立ちを隠すために小学6年生からそうしている。
なよなよしている。女顔。色白。線が細い。
男に言われたって少しも嬉しくない言葉を昔から素顔に浴びせられてきた。
小学校の時は「おまえ、女子よりめちゃくちゃかわいい顔してるけど、本当に男なのかよ」と、上級生の男の子たちに服を剥かれそうになったこともあって、その度にたっちゃんが守ってくれていた。
始業式のために体育館に移動するよう校内アナウンスが流れる。
教室から廊下へとはき出された生徒が体育館を目指して一斉に動いていく。
入学式は今日の午後からだから、体育館に集まるのは2、3年だけ。
一般進学コースの面々はどこか高揚している。
始業式には芸術総合コースに在籍中の有名人たちが参加するからだ。
「今日、一条琉唯は学校来てるかな?」
「主演のネットドラマの撮影でこないんじゃない? あれ視聴者数すごいらしいよ」
「あのドラマ、ちょっと内容むずいけど、面白くて続き気になる」
「琉唯くんの役作りの金髪マジで似合っててかっこいいよね」
「ノアちゃんも来てるかな?」
「ノアちゃん、インスタフォロワー数10万人突破してたよ」
「細いし、かわいいよねー。憧れる」
「今のピンクのハイトーンの巻き髪ロングもかわいいよね」
「琉唯くんとノアちゃん付き合ってるってマジなのかな?」
テレビやネットで活躍する有名人の学校でのレア姿を見られるのだ。
テンションが上がって当然だった。
それ目的でこの高校に進学した人も多いだろう。
2、3年が集って埋められた体育館は各クラス二列で整列していた。
芸術総合コースは体育館の右端に固まって整列しているから、2年が並んでいる位置からはほぼ見えない。
「一条琉唯いないっぽい」
「残念。ってか、ほとんどこういう式には参加していないよね」
「忙しいんじゃない? いちばん売れっ子だから」
特に調べようとしなくても、一条琉唯の情報は勝手に周りから入手できる。
――助かった。居ないんだ……。



