言葉に詰まったように琉唯が唇を引き結ぶ。
「何か理由があるなら僕に教えてほしい。琉唯はあの日、仕事をキャンセルして……」
「――ああ、もうめんどくさいな」
琉唯は僕の腕を掴むと、強引に歩き出す。
琉唯に促されるまま歩かされて、映像研究部の部室に連れ込まれた。
内側から鍵をかける琉唯。
確か琉唯からたっちゃんのことを聞かれて、無理やりキスされた日も同じようにこの部室で……。
「最後に一回くらい優陽を抱かせてもらおうか?」
「……琉唯?」
「優陽は女よりも綺麗な顔してるし、男を抱いた経験も今後の役者人生に活かせそうだし、最後に楽しませてよ」
僕の両腕を頭の上でひとまとめにするように琉唯は片手で押さえつけてきた。
足の間には琉唯の足が割り込んでくる。
もう片方の手では眼鏡を取り去られた。
「……やだ!」
「――大丈夫。ちゃんと優陽が痛くないように馴らしてやるから」
僕を壁に押さえつけたまま、くちゃりと耳の穴の中まで琉唯の舌が入ってくる。
ぐっと股の部分を割り込まれた足で刺激されて、下半身から妙な疼きが這い上がってきた。
「やめて、琉唯、こんなこと……」
逃げ場がなく、琉唯のなすがままにされる僕は身を捩ることすら出来ない。
「ほら、優陽は簡単に俺に犯られそうになるんだから、俺と近づかないほうが身のためだってわかるだろ」
鼓膜へと直に吹き込むように艶ののった低音を落とされ、それだけでビクッと身体が反応してしまう。
「――もう二度と近づきたくないくらい、俺を軽蔑してくれよ。頼むから……」
僕の両腕を頭上で拘束している琉唯の手が震えている。
琉唯は下を向いているから表情が見えなくて……。
「――琉唯。好きだよ……」
僕の声に弾かれたように琉唯は顔を上げた。
ほら、何で琉唯はそんなに憂いをその綺麗な瞳で語っているの?
「僕は琉唯が好き……」
「優陽は頭がおかしくなったか? 何で今から自分を無理やり犯そうとしている相手にそんなこと言えるんだよ」
「琉唯が僕を何とも思っていないってことはわかってる」
「……」
「僕が咲良菜緒に似ているから琉唯に関心をもたれてるってことも充分すぎるくらいわかってる」
「……」
「僕は咲良菜緒の代わりにされてるってこともわかってる」
「……」
「僕の母親は咲良菜緒なんだ……」
琉唯は瞠目し、僕の腕の拘束を解いた。
「僕は咲良菜緒の隠し子で、僕が産まれたせいで咲良菜緒は亡くなって……」
いつの間にか僕の目からは涙が溢れていた。
いつか琉唯には打ち明けたいと思っていた。
琉唯にならこんなに重大な秘密を明かしてもいいと、信頼を置いていったくらい、じわりじわりと僕は琉唯に惹かれていて……。
「――琉唯の好きな人を僕が奪ってごめんなさい……」
押しつぶされそうなほどの息苦しさで涙が止まらない。
拭っても拭っても、溢れ出てくる。
「でも、僕は琉唯のことが好きになってしまって……」
琉唯はギュッときつくきつく僕を抱きすくめるように腕を回してきた。
琉唯はずっと無言で、僕も泣きすぎて喋れなくて、僕の泣き声だけが静謐な部室に響く。
いつの間にか外の暗さに合わせて、部室の中も薄暗くなっていて……。
「――そう。俺にとって、優陽は咲良菜緒の代わりだった」
僕に回していた腕を解きながら、そう言った琉唯の低い声は震えていた。
「――最低なんだよ、俺は。だから優陽も早く俺のことは忘れたほうがいい」
僕を残して、琉唯は部室を出て行った。
とてつもなく胸が苦しくて苦しくて、やっと止まった涙が再び溢れ出てくる。
どうして、僕が泣き止むまで待っていてくれたんだよ……。
どうして、僕に残酷なことを伝える琉唯のほうが苦しそうにしているんだよ……。
どうして……?
これだけはわかる。
琉唯が何を抱えていようと、二度と僕に関わらないつもりでいることは。
「何か理由があるなら僕に教えてほしい。琉唯はあの日、仕事をキャンセルして……」
「――ああ、もうめんどくさいな」
琉唯は僕の腕を掴むと、強引に歩き出す。
琉唯に促されるまま歩かされて、映像研究部の部室に連れ込まれた。
内側から鍵をかける琉唯。
確か琉唯からたっちゃんのことを聞かれて、無理やりキスされた日も同じようにこの部室で……。
「最後に一回くらい優陽を抱かせてもらおうか?」
「……琉唯?」
「優陽は女よりも綺麗な顔してるし、男を抱いた経験も今後の役者人生に活かせそうだし、最後に楽しませてよ」
僕の両腕を頭の上でひとまとめにするように琉唯は片手で押さえつけてきた。
足の間には琉唯の足が割り込んでくる。
もう片方の手では眼鏡を取り去られた。
「……やだ!」
「――大丈夫。ちゃんと優陽が痛くないように馴らしてやるから」
僕を壁に押さえつけたまま、くちゃりと耳の穴の中まで琉唯の舌が入ってくる。
ぐっと股の部分を割り込まれた足で刺激されて、下半身から妙な疼きが這い上がってきた。
「やめて、琉唯、こんなこと……」
逃げ場がなく、琉唯のなすがままにされる僕は身を捩ることすら出来ない。
「ほら、優陽は簡単に俺に犯られそうになるんだから、俺と近づかないほうが身のためだってわかるだろ」
鼓膜へと直に吹き込むように艶ののった低音を落とされ、それだけでビクッと身体が反応してしまう。
「――もう二度と近づきたくないくらい、俺を軽蔑してくれよ。頼むから……」
僕の両腕を頭上で拘束している琉唯の手が震えている。
琉唯は下を向いているから表情が見えなくて……。
「――琉唯。好きだよ……」
僕の声に弾かれたように琉唯は顔を上げた。
ほら、何で琉唯はそんなに憂いをその綺麗な瞳で語っているの?
「僕は琉唯が好き……」
「優陽は頭がおかしくなったか? 何で今から自分を無理やり犯そうとしている相手にそんなこと言えるんだよ」
「琉唯が僕を何とも思っていないってことはわかってる」
「……」
「僕が咲良菜緒に似ているから琉唯に関心をもたれてるってことも充分すぎるくらいわかってる」
「……」
「僕は咲良菜緒の代わりにされてるってこともわかってる」
「……」
「僕の母親は咲良菜緒なんだ……」
琉唯は瞠目し、僕の腕の拘束を解いた。
「僕は咲良菜緒の隠し子で、僕が産まれたせいで咲良菜緒は亡くなって……」
いつの間にか僕の目からは涙が溢れていた。
いつか琉唯には打ち明けたいと思っていた。
琉唯にならこんなに重大な秘密を明かしてもいいと、信頼を置いていったくらい、じわりじわりと僕は琉唯に惹かれていて……。
「――琉唯の好きな人を僕が奪ってごめんなさい……」
押しつぶされそうなほどの息苦しさで涙が止まらない。
拭っても拭っても、溢れ出てくる。
「でも、僕は琉唯のことが好きになってしまって……」
琉唯はギュッときつくきつく僕を抱きすくめるように腕を回してきた。
琉唯はずっと無言で、僕も泣きすぎて喋れなくて、僕の泣き声だけが静謐な部室に響く。
いつの間にか外の暗さに合わせて、部室の中も薄暗くなっていて……。
「――そう。俺にとって、優陽は咲良菜緒の代わりだった」
僕に回していた腕を解きながら、そう言った琉唯の低い声は震えていた。
「――最低なんだよ、俺は。だから優陽も早く俺のことは忘れたほうがいい」
僕を残して、琉唯は部室を出て行った。
とてつもなく胸が苦しくて苦しくて、やっと止まった涙が再び溢れ出てくる。
どうして、僕が泣き止むまで待っていてくれたんだよ……。
どうして、僕に残酷なことを伝える琉唯のほうが苦しそうにしているんだよ……。
どうして……?
これだけはわかる。
琉唯が何を抱えていようと、二度と僕に関わらないつもりでいることは。



