何のために七嶋が立ち入りの許されていない芸術総合コースの教室へと訪れて、俺に会いに来ているかは明白だった。
――優陽のため、だろ?
余りにも注目されていたから、俺と七嶋は無言のままアネックス館の階段を上がり、特別教室が立ち並ぶ人気のない廊下まで二人でやってきた。
途中、俺たちが気になるのか何人か尾けてきていたけれど、予鈴が鳴り響いたからか引き返していった。
「俺、久しぶりに登校したんだけど。朝からアポなしで訪問してきてサボらせるつもり?」
廊下の壁に背を預けて、七嶋に向き直った。
七嶋は俺の笑みに全く合わせようともせず、敵意剥き出しの好戦的な眼差しを向けてくる。
まだ世間の汚れを知らないような育ちの良い清廉とした雰囲気。
戦隊ヒーローでいったら絶対にレッドを担当しそうなタイプ。
イラつくほど七嶋は優陽の隣が似合ってんだよな。
「興味本位で優陽に近づくのやめてもらえますか?」
どストレートに本題を切り出してくる七嶋。
「興味本位じゃないって。歴とした恋愛感情」
俺の答えに七嶋は驚いたように目を瞠る。
俺が何て答えると七嶋は想定していたんだろう。
優陽は遊び相手だとか?
からかっているだけとか?
「それって、ちゃんと優陽が好きだってことかよ」
「当たり前だろ。他に何かある?」
「一条は優陽の素顔を知ってるよな」
――そういうことか。
優陽の顔が咲良菜緒に似ているからか。
七嶋はあえて咲良菜緒の名前を出さずに俺が優陽の素顔を知っているか確認してきていた。
「確かに"似ている"とも思うし、俺が今まで見てきた人間の中で男女合わせたとしても、優陽の顔が一番綺麗だ」
「だったら……」
「けど、俺は優陽の容姿だけが好きなわけじゃない」
憂鬱なだけだった雨の日の美しさを教えてくれた人。
俺が不安でよりかかった時に黙って寄り添って傍にいてくれる人。
――優陽の全てが愛しくて、たまらない。
「――自分の立場わかってるんだろ? 頼むから優陽を振り回すのだけはやめてほしい」
初めて七嶋が俺から気まずそうに目を逸らした。
七嶋はわかっている。
俺の言葉に偽りがないってことを。
「七嶋ってセブファクの社長の息子なんだよな」
「それが何?」
「連絡先、教えて」
「はあ?」
七嶋が怪訝な顔つきで逸らしていた視線を俺に戻す。
「芸能界で生きていなくても七嶋は一般人とは感覚が違う。だから信用できる。それは優陽にも感じていた」
「それで何で俺と一条が連絡とる必要があるんだよ」
「別に俺と仲良くしろなんて言っていない。俺は優陽と距離が近すぎる七嶋にムカついている」
「はっきり言ってくれるな」
「“万が一“、優陽に何かあった時のためだ。俺と七嶋が連絡とれる状態にしておいたほうがいいだろ」
七嶋はハッと息を呑む。
七嶋にやむを得ない感を出されながら、モバイルメッセンジャーの連絡先を教えあった。
「七嶋」
「何?」
「優陽って咲良菜緒と何か関係あるのか?」
俺の質問に七嶋は少し考えこむように沈黙してから、
「優陽に聞けば?」
と、悪童のような笑顔を作って答えてみせる。
俺と七嶋はとことん相性が悪いらしかった。
――優陽のため、だろ?
余りにも注目されていたから、俺と七嶋は無言のままアネックス館の階段を上がり、特別教室が立ち並ぶ人気のない廊下まで二人でやってきた。
途中、俺たちが気になるのか何人か尾けてきていたけれど、予鈴が鳴り響いたからか引き返していった。
「俺、久しぶりに登校したんだけど。朝からアポなしで訪問してきてサボらせるつもり?」
廊下の壁に背を預けて、七嶋に向き直った。
七嶋は俺の笑みに全く合わせようともせず、敵意剥き出しの好戦的な眼差しを向けてくる。
まだ世間の汚れを知らないような育ちの良い清廉とした雰囲気。
戦隊ヒーローでいったら絶対にレッドを担当しそうなタイプ。
イラつくほど七嶋は優陽の隣が似合ってんだよな。
「興味本位で優陽に近づくのやめてもらえますか?」
どストレートに本題を切り出してくる七嶋。
「興味本位じゃないって。歴とした恋愛感情」
俺の答えに七嶋は驚いたように目を瞠る。
俺が何て答えると七嶋は想定していたんだろう。
優陽は遊び相手だとか?
からかっているだけとか?
「それって、ちゃんと優陽が好きだってことかよ」
「当たり前だろ。他に何かある?」
「一条は優陽の素顔を知ってるよな」
――そういうことか。
優陽の顔が咲良菜緒に似ているからか。
七嶋はあえて咲良菜緒の名前を出さずに俺が優陽の素顔を知っているか確認してきていた。
「確かに"似ている"とも思うし、俺が今まで見てきた人間の中で男女合わせたとしても、優陽の顔が一番綺麗だ」
「だったら……」
「けど、俺は優陽の容姿だけが好きなわけじゃない」
憂鬱なだけだった雨の日の美しさを教えてくれた人。
俺が不安でよりかかった時に黙って寄り添って傍にいてくれる人。
――優陽の全てが愛しくて、たまらない。
「――自分の立場わかってるんだろ? 頼むから優陽を振り回すのだけはやめてほしい」
初めて七嶋が俺から気まずそうに目を逸らした。
七嶋はわかっている。
俺の言葉に偽りがないってことを。
「七嶋ってセブファクの社長の息子なんだよな」
「それが何?」
「連絡先、教えて」
「はあ?」
七嶋が怪訝な顔つきで逸らしていた視線を俺に戻す。
「芸能界で生きていなくても七嶋は一般人とは感覚が違う。だから信用できる。それは優陽にも感じていた」
「それで何で俺と一条が連絡とる必要があるんだよ」
「別に俺と仲良くしろなんて言っていない。俺は優陽と距離が近すぎる七嶋にムカついている」
「はっきり言ってくれるな」
「“万が一“、優陽に何かあった時のためだ。俺と七嶋が連絡とれる状態にしておいたほうがいいだろ」
七嶋はハッと息を呑む。
七嶋にやむを得ない感を出されながら、モバイルメッセンジャーの連絡先を教えあった。
「七嶋」
「何?」
「優陽って咲良菜緒と何か関係あるのか?」
俺の質問に七嶋は少し考えこむように沈黙してから、
「優陽に聞けば?」
と、悪童のような笑顔を作って答えてみせる。
俺と七嶋はとことん相性が悪いらしかった。



